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しりあいの女の子で、ちょっとかわった電話のとりかたをする子がいる。どうかわっているかというと、声に抑揚というものがないのだ。彼女に電話をかけると、電話のつながった音のあとに、感情とか情緒とかいうものがいっさいつたわってこない声で、しかもどこかまのびした調子で、「はい、○○です」といわれる。かけたほうはたいてい「ああこれは留守番電話なのだ」というふうにかんちがいしてしまう。それで例の「発信音が鳴ったらメッセージを云々」というきまり文句がくるまで無言でまつのだけど、ところがそのうち電話のむこうで彼女が「もしもし? もしもーし? どなたですかあ?」とかなんとかやりだすので、びっくりしてしまう。彼女は彼女で、会社でも自宅でもさまざまなひとからヒンパンに留守番電話だとおもわれてしまうので、そのことでわりと傷ついてたらしい。ひとそれぞれ、悩みはいろいろである。
しかし、さいきんは彼女も開きなおって、いやなやつからの電話だとわかったときに、最後まで留守番電話のふりをしてみたのだそうである。「はい、○○です。ただいまでかけております。御用のかたは、ピーっと鳴ったらメッセージをおねがいします」と、わきめもふらずにたたみこんでしまったのだそうだ。きっとだまされないひとはいないだろうとおもう。なにしろ彼女の電話のとりかたは、それくらい非人間的なのだ。ところがこれには致命的な欠陥があって、「ピーっと鳴ったらメッセージをおねがいします」のあとの、「ピー」という音がだせないのだ。しばらく考えたのち、しかたなく彼女は受話器をおしりにあてて、「プー」と屁を‥‥というのはたったいまつくったデタラメで、しかたなく彼女はへたくそな口笛をならして、そこで嘘がばれて相手に怒られたのだそうである。なんか、女の子っていうのはいろいろと不思議なことを考えつくものだなあとおもう。
ともかく、そういうわけでおれはいま、「ピー」というあの音のでるなにかを彼女のために探してるところです。
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