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→へー、こういう部屋なんだ。ふーん。でさ、家賃はどんくらい? えー、そんなすんのお? だまされてんじぁないのお? そうなの? そんくらいするの? ふーん。で、ここでまた大学の女の子をだまそうってわけだ。だめだめとぼけたって。へっ、どうだかね。だけどあんた忘れちぁダメだよ、あんたにはビッチューの面倒をみてく義務があんだからねっ。あんたはいつもそうやってヘラヘラと安うけあいすっけど、あたしはあんたのことなんかぜんぜん信用してないんだかんね。もしまたしぉうこりもないことやりだしたら、こんどこそタダじぁすまないよっ。そこんとこだけは、よーっくおぼえといてよね。
→‥ねえところでさ、さいきん沖山くんとあってない? ‥そう、あってないの。ねえ、なんか聞いてない? ‥そう、なんも聞いてないの。えー、ダメだよ、こんなこと、他人に話せないよお。えー、どうしようかなあ、ううむ。ねえくりたくん、あたしが話したら、あたしに協力してくれる? ほんとに? ほんとはこんなこと話したくないんだけど、沖山くんのこととなると、くりたくんしか相談できるひとがいなくてさ。じぁ約束だよ、約束。協力してよね。あと、もちろん誰にもいっちぁダメだよ。ぜったいだよ、ぜーったい。
→こないだ、沖山くんとあったのね。受験が終わって一段落ついて、沖山くんも退屈してたんだろうな。あたしんとこに電話をかけてきてさ、あたしも春休みでまいにちヒマだし、あおうってことになって神保町でまちあわせして。ところがひさびさにあったってのに、沖山くんたらくーらくってさあ。大学どこも受かんなかったから無理もないけど、それにしてもくーらくってさ。イジイジイジイジしてて、あたしああいう男ってほんとは嫌いなんだけど、でもほらやっぱりかわいそうじぁん。こういうときって慰めてあげるのが女の子の役目なんだろうなっておもって、いっしぉけんめい励ましてあげてたのね。するとそのうち沖山くんもすこしは元気になってきて、さていまからなにしようってことになったの。そしたら沖山くん、あたしん家に行きたいっていいだしたのね。すこしまえに「今日あたしんち、だーれもいないんだ」とかいっちぁったから、そんでそんなこといいだしたとおもうんだけど、家のひとが誰もいないときに男の子なんかいれちぁまずいかなーともおもったんだけど、沖山くん、すっごい落ち込んでるみたいだったから、そういうときって冷たくしたらかわいそうだとおもって、沖山くんのいうこときいて、ふたりして電車にのって、あたしんちいったのね。
→それで、あたしの部屋に通していろいろ話してたんだけど、そのうち、案の定つうかなんつうか、エッチなことしようとしてきたのね。あたしが下手にでてるからとおもっていい気になって「なぐさめてくれよ」「かなしいんだよ」とかいって抱きついてきて。あたしも、キスくらいならいいかとおもってそのくらいは相手してたんだけど、それでつけあがっちぁってあのやろー、スカートのなかに手をいれてきたのよお。さすがにあたしももうガマンの限界だとおもって「ちぉとやめてよっ」って抵抗したんだけど、沖山くん、いつになくしつこくってさ。いつもならすぐひきさがるんだけど、沖山くん、あのときにかぎって強気でさあ。あたしがやさしくしてやってたから調子にのっちぁったんだろうな。強引にちからづくであたしを押し倒そうとしてきて、冗談じぁないよってあたしが抵抗して、取っ組みあいみたいになっちぁったのね。部屋んなかで声とかはりあげてドタドタやってて。そしたらさ。
→パパがとつぜん、部屋に飛びこんできちぁたのよ。うん、そうだよ、誰もいないはずだったんだよ、家の中には。ところがその日はたまたま仕事でパパが家のちかくまで来てて、ついでにふらっと立ち寄ったんだって。そのときちぉうどあたしと沖山くんがドタバタやってたわけなの。ったく運が悪いったらありぁしない。やんなっちぁうよもう。そんでパパが血相かえて部屋にはいってきて、そこでなにをしてるんだおまえらはってことになって、沖山くんなんかもうマッサオんなっちぁってさ。けっきぉく沖山くんは家から追い出されちぁったのね。沖山くんがいなくなったあとで、あたしはくどくど説教されちぁってさ。あたしはなんも悪いことなんかしてないのに、沖山くんを勇気づけてあげようとおもってただけなのに。あいつがあんなのことをしようとするから、あんなことになっちぁったのよ。あたしなんかずーと説教されちぁってさ、あの外人はどこの誰なんだってしつこく聞かれて。うん、パパったら、はじめ沖山くんのことを外人だとおもってたみたい。そんでうまくごまかせそうだったんだけど、あの沖山のバカが、あたしともみあってたとき、定期入れを落としちぁったらしいの。それが部屋にころがってて、パパがそれをみつけてひろげてみると、予備校の学生証とかがはいってて。それで住所とかなまえとかぜんぶばれちぁって、ほら、パパって刑事だからそういうのは得意じぁん。
→それでさっそく沖山くんの実家に電話をして、沖山くんのおかあさんがでたみたいなんだけど、パパったら、そのおかあさんに怒ってるのよお。おたくのムスコはうちのムスメをどうのこうのって。もうほんとやんなっちぁうよ、どうしてそんなことまで干渉しようとするのよお、そうおもうでしぉ? ぜんぜんあたしのことなんか信用してくれようとしないんだから。
→それであたしもあったまきちぁって、ここんとこまるでパパとくちきいてないんだ。だってさ、ひどいんだもん「もうあの金髪とは二度とあうな」って、あたまごなしにそれなんだよ、そのうえ「あの金髪は浪人だそうじぁないか浪人のくせに」って、そこまでいうのよぉ。そんなの、べつにかまわないじぁんねー、浪人ぐらいしたってかまわないじぁんねー、どうしてそんなことをうだうだいうんだよもう。だからあたし、それいらいずっとパパとママと戦ってるんだ。ママなんか一日じう、つきっきりであたしのことみはってる。沖山くんに電話するんじぁないかとか、隠れてあうんじぁないかとか、そういうこと。みはってる。今日だって、家をでてくんのたいへんだったんだから。それで今日も大喧嘩して、むりやりでてきちぁったんだ。だってあたし、このまま泣き寝入りなんて、ぜったいしないんだから。ぜったい沖山くんとつづけるんだから。応援してね。くりたくんはあたしたちの味方でしぉ。あてにしてるからね。
→で今日は頼みにきたんだけど、いまからちぉっと沖山くんのアパートにいって、様子をみてきてほしいの。あの日は沖山くん、うちにお金とか忘れてっちぁったし、ちぁんと無事にアパートに帰れたかどうかも心配だし。あたしが行ければほんとはそれがいちばんいいんだけど、でも、もしかしたらママが張り込んでるかもしれないじぁん。ううん、冗談なんかじぁなくて、ほんとにそういうことするんだって、うちの親は。こっそり沖山くんにあおうとしてたなんてことがばれちぁったら、こんどこそあたし、ひとりで外出なんてぜったい許してもらえなくなっちぁうから。だから、ねえ、くりたくん、ねえ、くりたくうん、いまから沖山くんのとこにいってきてくんない? できたら連れてきてほしいんだ。ね、おねがい。おねがいだからいまから沖山くんのとこいってきて。ね。おねがい。ねっねっ。
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