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→やあみんな元気かい。おれがぽいうだ。放送をきいてくれてありがとう。いつだってこころはオーバーヒート、今夜もしばらくつきあってくれ。
→きょうの夕方、おれは局のちかくの川の土手にすわりこんで、川のながれをながめてたんだ。あいかわらずかわりばえがしないって? まあ聞いてくれよ、たまにはかわりばえのすることもある。
→そう、きょうもおれは川をながめた。これからさきおれは、どこへながれさていくのかなあ、なんてかんがえながらね。ちょうど夕日がむこうに沈んだのをみとどけて、気がすんだおれは局へもどろうとたちあがった。すると、遠くのほうから、ううん、ううん、というだれかのうめき声がきこえるんだ。
→くるしそうな声でね。まちがって夕ごはんを三人まえもたべてしまったときにおれがもらす声とそっくりだったな。なんだろうと声のきこえる方角へおれはいってみた。そうしたら、草むらのなかに、女の子が倒れてたんだ。あわてておれは彼女をだきかかえて、どうしました、とたずねた。けれども彼女は、ううん、ううん、とくるしんでるだけなんだ。
→女の子は地球の財産だ。みんなだってそうおもうだろう? こんな財産をむざむざとうしなうわけにはいかない。それでおれは彼女の肩をつかんで、しっかりして、とゆさぶったのさ。すると彼女は薄目をあけておれをみた。それから「みず‥‥みず‥‥」とつぶやいた。すこしはなれたところに清涼飲料水の自動販売機があったのをおもいだしておれは、すこし我慢して、と彼女にいいおいて、そこへ走ろうとしたんだ。ところが彼女はというとおれの腕をつかんで、あいたほうの手で川の方角を指さすんだよ。川を指さして「みず‥‥」とおれにつぶやくんだ。
→ねえみんな、彼女がなにをいいたいのか、わかるかい? おれにはわからなかった。けれども、彼女の真剣にうったえかける目をみて、もしかしたらとおもっておれは川べりへいき、その水を手ですくって彼女のところにもどったんだ。
→そうしたら彼女は、おれにアタマをさしだすんだよ。どうやら水をかけてくれといってるらしい。ためしにかけてあげたよ。彼女のアタマに、水をそうっと。
→そうしたら、ねえ、とたんに彼女は元気になって、ああ、生き返りました、どうもありがとう、あなたはイノチの恩人です、ときた。もしよろしかったらこれからあなたに、すばらしい世界を案内させてくださいませんか、っていうんだ。これにはぐっときちゃったよ。どんなすばらしい世界なんだろう? ぐっときたね。でも、おれにはラジオの仕事がある。まったく、じぶんの職務熱心を今日ほどうらんだことはないね。女の子の誘いもよりも仕事のほうがだいじだなんて、いったいおれはどこで人生をまちがっちゃったんだろう?
→それでも、ただことわるってのももったいない話だろ? だからおれはこんなふうにもちかけてみたんだ。あの、川むこうにみえる煙突に月がかかるころ、今夜のおれの仕事はおわる。だから、その時間にここでまっていてくれないか、ってね。そうしたら彼女は、わかった、待ってるわ、あの煙突に月ね、とおれにほほえんで、それからすたすたと川にあるいていって、そこにとびこんじゃったのさ。
→オーケー、うるおいのないおしゃべりはこれくらいにして曲にしよう。イエスで「サイベリアン・カートゥルー」。おれたちのアタマのうえには、いつだって川がながれてる。
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