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浪人してさいしょに♂ったのはチバの女となんだ。それから芋ヅル式にでてきたチバ女を中心にいくばくかの女と♂ったんだけど、そいつはまた実に不幸な事故の連続でもあったんだ。で、なにが悪かったのかなーとじぶんでも時たま考えてたんだけど、近頃ダザイオサム先生の『走れメロス』を読んで、じぶんの愚かさがやっとわかったんだ。いけないのはぜんぶおれ自身だったんだ。ったく、いまじぁチンポコがちぢみあがるくらい改心してんのさ。これからおれはメロスの生き方を見習って、清く正しく真っ直ぐに生きていこうと誓うシダイなんだね。ついでにおれはこの機会に、いけないのはみんなおれである不幸な事故の連続を正直に告白して、メロスにざんげしようと思ってんだ。ごめんなさいメロス。どうか一発おれをなぐってくれセリヌンティウス。でなければ僕には君を抱擁する資格がない。
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じゃ話をはじめる。高校を終えてみりぁ大学はひとつも受かってないしおまけにそれまでつきあってた(いっぱいやらしてくれた)女の子にはふられるしで、まったくどいつもこいつもどいつもこいつもどうなってんだよこのやろうちくしょうめっつう気持ちで毎日フトンなかでゴロチャラしてて、予備校にいきだしたのは六月になってからなんだ。すいど橋のイモヅル学館。行ってみてたまげたのが教室の雰囲気なんだよね。予備校つうからには汚い男がゾロゾロいてボーとしてんのかと思ってたらぜんぜん逆なんだこれが。華やかなんだよ。なにしろ女が多い。だから男もふやけてちぁらちぁらしてんのばかしでさ。想像してたのとはまるで違う教室の雰囲気にはじめはとまどったおれだったんだけど、でもその日の午後にはすでに決心してたね。「いつまでもいじけちぁいらんない。みてろよてめー」って。なにをみせんだか知んないけど。
で高校んとき同級生だった沖山ってお調子もんが、クラスは違うんだけど予備校にいてさ。授業が終わったあとおれに、予備校の女をあてがってきたんだよ、たのんでもないのに。な可愛いだろ少し変わってっけどおまえならうまくいくよとかなんとかいいながら。なんだか顔がホタホタした女で、おれとしてはあんまし気が乗んなかったんだけど、ちょっとまえに「みてろよてめー」宣言したところだったんで、まとりあえず二人して予備校のちかくの白十字って喫茶店へ行ったんだ。このホタホタがたしかになにやらヘンな女で、注文したコーヒーにはまったく口をつけずにクンクンにおいかいだだけだし、かとおもえばメンソールのタバコをいきなり取りだしてプカプカーとか吸うし、おれがなんかいってもフンとかいう感じで首をすくめるだけで、ぜんぜんしぁべんなくってさ。あっというまにテーブルのまわりはホタホタの魔力に支配されてしまったんだ。さすがのおれもいささか弱っちぁってウジウジしてたら、プカーと煙をはきだしながらぽつりとホタホタはいったんだ。
「クリタくんて、ダザイ読んだことある?」
へ? とかおれは口をあけて煙幕に目をこらすと、ホタホタの口はまたプカーと煙をはきだしたあとでさらにいったんだ。
「ダザイよ、ダザイ」
「ダ、ダザイすか」
「そう、ダザイ」
「あの伊豆のオドリコの‥‥」
「ちがう。人間失格。のダザイ」
「にっ、にんげんしっかく? なな、ないけど」
「ふうん。クリタくんみたいなひとはゼヒ読むべきだと思うな。あなた破滅的なとこあるから。ダザイはいいわよ。プカハー」
っと煙をまき散らすこの女こそチバ女1号、カネモチのワガママバカ娘、森下ホタホタだったんだね。
このホタホタがどういうわけだかおれのこと気にいっちゃったみたいでさ、マジメに予備校通いはじめたおれにやたらとつきまとってくるわけ。相変わらず、ダザイがプカー、アンゴがプカーて調子で。おれはといえば昔から「人類愛のクリタ」と呼ばれてて、来るものはいつだって拒まずにきちんと相手してやって、一緒にポーランドだかソープランドだかの映画みに行ったりガロウとか詩のロウドク会とかに行ってやったりしてたんだ。けど、メロスに誓っていうけど、人類愛のおれじぁなけりぁほんとやってらんないよ。あんなクソ退屈なミミズの屁みたいな映画だのなんだのにつきあわされて、おまけにホタホタはいつだってトンチンカンな感想しかいわないし。
「あの主人公の墓の回りに集まった人たちが拍手をするシーンに、ヨーロッパのエッセンスを感じるよね」
ばかやろう。おれのケツをなめやがれっつうの。そんな風にして三週間ばかり過ぎれば、君達もわかってるだろうけど、おれだってわかってたんだ。ホタホタは結局、脳みそまでホタホタなんだと。ダザプカー攻撃には少しびびったけど、いつまでもやられっぱなしのおれじぁないのさ
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ホタホタと最初にキスしたのは七月になってすぐ、ホタホタの運転する赤いクワトロの中なんだけどさ。別にかまわないんだけどクワトロって十八歳の浪人の女の子が乗るようなクルマだっけ? チバの住宅街のなんだかとりすましたホタホタの家の車庫で、クワトロに乗りこみながらおれはまっさきにそのことをたずねたよ。すると
「お父さんがドイツのクルマにしろって勝手に決めちぁったのよ」
ときた。ったくカネモチのお父さんの考えることは理解できない。
「そんで免許はいつとったの?」
「一週間まえ。最初に乗ったときガレージから出るのにシッパイしちぁって、うしろ、ぶっけちぁったのね。そいで修理に出してて、これに乗るの、今日で二回目なんだ」
おいおいおいおいおい。なんでそれをはじめにいわないんだよ。だいたいおれもおかしいとは思ったんだよ、いつになくホタホタが下手にでてて、不自然なツクリ笑いをうかべながら予備校の教室でおれに近づいてきて「くりたくん、こんどの日曜日ヒマかな? ドライブいかない?」とかいってきたときに、なんかイヤな予感がしたんだよ。その予感がなんなのかもわかんないまま、もちろんいいよって安請け合いしちぁったおれがバカだったんだけど。でもいまさらあともどりもできないし、そんなわけでシートベルトをガッチリと締めたおれを乗せてクワトロ号はヘロヘロと発進したんだ。クワトロ工場のドイツ人がみたら涙を流すようなヘナチョコ運転で。そんで、その目的地というのが、これがまたなんのこたないイバラギのおれの家なんだねベイビー。わかるかい? 電車に揺られておれははるばるチバ県チバ市くんだりまででかけてって、ホタホタのクルマでイバラギへ来ておれんちでしこたまセックスして、したらまたチバ市へ帰って、そこからおれはまた電車でイバラギへ帰ってこようつうわけだ。いやしこたまセックスのところはホタホタはどう思ってたかしんないけど。ともかくこんな、クワトロ工場のドイツ人が聞いたらたまげて腰を抜かすような素晴らしいドライブを思いつくのも、ホタホタならではのことではある。ったくカネモチときたら、ムスメの考えることまで理解できない。
さておれはもちろんその日、♂るつもりでいたんだ。だもんだから少しツバでもつけとこうかと思って、チバの山ん中の、いかにもいかがわしい竹ヤブのとこでクルマを停めさしたのさ。休もうよとかいって。こんな風に行き当たりばったりに休んだりするのもメロスの生きざまに反することで、いまじぁ後悔してる。やっぱり男は、力の限り走って走って走らなくちゃならない。そうだろメロス。いまじぁ反省してるよ。でも、まるで交通のない道でさ、クルマを停めてみると、すごく静かなわけ。天気もよくて。風が吹くと竹がシクシク鳴ってさ。悪くない感じなんだよメロス。ホタホタも上機嫌さ。これならツバつけんのも簡単そうだ。
「わりと運転うまいじぁん。安心したよ」
こういうお世辞って、人類愛あふれる男じぁないと絶対いえない。
「え、そうかなあ」
「うまいうまい。才能あるって」(嘘にきまってんだろ。本気にすんなよ←心の声)
「ほんと?」
「ホントホント。だからさ」(ウソウソ。そんなことよりさ)
「なに?」
「キスさしてよ」(やらしてよ)
「エエエエエ?」
とか声をあげたホタホタなんだけど、なんつうか、嫌がってないのがわかるわけ。そういうのってほら、メロスだってわかるだろ? それで早速ホタホタの肩を抱きよせてキスしたんだけどさ。ホタホタときたら慣れてないみたいで、硬直しちぁってんだよ。
「もっとチカラ抜けよ」
っつってそのまま一分ばかり口をくっつけてるとホタホタもやわらかくなってきてさ。脱力してきて。それに反比例するかのごとくおれのチンポコもホタホタしてきて。しめしめとか思って、さあて頃合かとばかりTシァツの下から背中に手をまわして、ブラジアを外したんだけど。そん時、なんだか妙な感じがして、うす目をあけて外を見たらさ。
覗かれてんだよ。それも、一人や二人じぁなくって、二十人くらいでクルマを取り巻いてさ。角砂糖に群がるアリみたいに。ぜんぶドカチンの奴らで、みんなガラスに顔を押しつけるほど近づけて、にやにやしながら覗いてんだよ。クルマん中からみると、もう、窓という窓をびっしりとスキ間なく、
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