とり  スエゼン

「さいきんねてなくてさあ」
「なんで?」
「戦ってるんだよ」
「なにと?」
「女」
「女?」
「うん。女」
「ねるときに?」
「ねるときつうか、ねてるとき」
「なんでねてるときに女と戦うの? だいたい、その女ってだれ?」
「だれかなんておれだってしらねえよ」
「なんでしらない女とねてて戦うんだよ。なんだよそれ、ぜんぜん話がわかんねえぞ」
「おれだってわかんねえよ。だけどでるんだからしょうがねえだろ」
「でる?」
「だって、オバケはでるものだろ」
「オバケ? 幽霊なの? 幽霊がでるの?」
「あれ、話してなかったっけ」
「話してねえよっ。なんだよそれ。女のオバケがでるの? おまえのとこに?」
「うん」
「いつから」
「二週間くらいまえから」
「どんなふうに」
「それがさ〜、おれがねてるとさ、きゅうに息ぐるしくなって、目をさますと、フトンのうえにのっかってるんだよ。それも、毎晩でるんだよ。おれもではじめのころはびびったけど、そのうちアタマにきたわけ。それで『ここはおまえなんかのくるところじゃないっ。でてけっ』っつってさ、戦ってたんだけど、しかもさ〜、だんだんそいつ、大胆になってきちゃって、おれのフトンのなかにもぐりこんでくるんだよ。よくみるとさあ、けっこうかわいいんだよな、そいつ。それでさ〜、おれもつい出来心で、やっちゃったんだよ、そいつと」
「へ? やっちゃった? おまえ、オバケとやっちゃったの?」
「だってほらいうだろ、スエゼンなんとかって」
「うかかかかか、ばかだなあ、ばかだなあ、うかかかかか」
「うはははは」
「んで、どうだった?」
「それがね、けっこうグアイがよくってさ、おれもだんだんその気になってきちゃって、いきそうになったのね。おれってさ、セージョーイじゃないといけないから、そいつにのっかって、腰うごかして、がんばったわけ。そんで、うっ、いくっ、とかおもった瞬間に、そいつが目を開いたわけ」
「目を開いた?」
「うん。それまでそいつは、ずっと目をとじたままだったんだよ。それが、最後の最後にその目を開いたんだけどさ、それが、真っ赤なんだよう。目玉がぜんぶ、真っ赤でさ、その目がこっちを見てるんだよう。おれはそれを見た瞬間、ゾ〜っとしちゃって、チンポコがぷしゅ〜ってしぼんでっちゃったよ。」
 この話を聞かされたとき、おれはただひたすらにげらげら笑ってたんだが、よく考えると、けっこうこわいかもしれない。でも、やっぱり、おかしいよなあ。ばかだなあ。というわけで、クマとよばれる男が睡眠不足でなやんでたときの話でした。

[08,02,2000]