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そもそも男子中学生というのはロクでもないもので、おれにもそういうみぶんだったことがあるのでよくわかるのだが、あんなにいかしておいてもよのなかのタメにならないものはない。タメにならないどころか、ガイがあるばっかりで、じっさいじぶんが中学生のころどんなだったかをおもいだそうとするとあぜんとすることになる。なにしろあまりになにもかんがえていなかったので、おもいだそうにもおもいだせないのだ。それでもむりにおもいだそうとつとめると、やがておれのあたまにうっすらとうかんでくる白いブッタイがある。かれがかかえていたあのしろいブッタイだ。
というわけで、あんのじょう中学生のときもわたくしはバカでございました。そんで、バカはバカをよぶというか、ともだちもみんなバカで、バカなあそびが流行してはすぐにすたれていき、そしてだれもなにもえるものはないのであったという無益な日々をすごしていたんだけど、そのバカあそびのひとつで、中学二年生のころに万引きがはやった。そんなもん、はやっちゃいかんよな。おれもそうおもう。でもはやっちゃったんだからしょうがない。クラスの十人くらいの連中としばらく、あちこちの店にいっては万引き行為をじゅんばんにハタラいて、シャープペンシルだとかチューイングガムだとかを万引きしてみんなでそのエモノを品定めしておまえはエライだとかなんだとかいいあってた。ところが、なかまのなかにひとり、どうにも万引きをしないやつがいた。どんなにみんなでじゅんじゅんと道理をおっていいきかせても、そういうのはしちゃいけないだとかなんだとかぐだぐだぐだぐだぬかすばかりでぜったいにやろうとしない。そのあまりの煮えきらなさにだんだんおれたちも意地になってきて、ある日の学校がえり、スーパーのまえまでそいつをつれていって、みんなで輪になってとりかこみ、「いまからこのみせでなにかシゴトしてこい。もしやらなかったらてめえ、フクロにするぞ」とおどしてそいつを店内に送りこんだのであった。そいつは半泣き状態でふらふらといりぐちの奥へきえた。おれたちはわくわくしながらそいつがでてくるのをみせのまえの電柱のかげに隠れてまっていた。すると、一分もしないうちにそいつはでてきた。せっぱつまった形相で、全力疾走でみせからでてきた。ちゃんと律儀にシゴトはしてきたみたいで、エモノをかかえてはしりでてきた。おいおい、モノをハダカのままもってくるやつがいるかよとあきれながら、かかえているしろいブッタイをよくみると、それはハクサイであった。なにをおもったのかかれは、ハクサイをまるごとひとつ、ラグビーボールのように小脇にかかえておれたちのまえにあらわれたのであった。たぶんハクサイに手をかけるまでのかれのこころのなかではさまざまな葛藤があったのだろう。そのせいで、正常な判断能力というものがうしなわれていたのだろう。しかし、いかににんげんおいつめられると意表の行動にでるものだとはいえ、いくらなんだってヤサイはないだろうというか、よりによってなんでハクサイなんだというか、だいたいおまえそれデカすぎるだろうというか、それをいったいなににつかうつもりなんだというか、学生服に生ヤサイというこの、とりあわせのいようさにわれわれもドギモをぬかれてしまって、みんなでぱたぱたぱたぱたとはしってその場からにげた。うしろからハクサイをかかえたそいつが「まってくれ〜」と泣きながらおいかけてくる。でもおれたちも必死で「こっちにくるんじゃね〜」とわめきながらにげたフジシロ町商店街の午後なのであった。
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