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からだじゅうがいたい。きょうはまったくつかいものにならない一日をすごしてしまった。とくにつらいのは階段で、のぼれないのだ。壁に手をついて、一段ずつやっとのおもいでのぼる。でもそんなのはまだましで、じつは階段というのは、おりるほうがたいへんなのだと気づくのは、のぼりおえたあとなのだった。会社の研修で、体育会系の合宿ふうのやつに一泊二日でいってきた。おかげでこのありさまだ。筋肉痛でなにをするにもふだんの三倍くらいの時間がかかる。葉っぱでラリっちゃったスローモーションのひとみたいになってしまった。ともかくこういうときはくうだけくってあとは寝ておくべきだなとかんがえて、ニクだの野菜だのマメだの乳だのなんだのととにかくなんでもいれたカレーをつくってたべ、あとはねていた。傷をおった動物がうすくらがりでひたすらじっとして回復をまつみたいだ。
ところで軍隊ふうの訓練というやつは、もちろんあんなのはだれだって否定するとおもうんだけど、いがいとながいことこのさきもつづくんじゃないかとおもう。肉体的に疲労させたところに罵声をあびせるというのは、洗脳のいちばんよくあるパターンなわけで、じっさい軍隊へいけばいまでもそれがおこなわれてるんだけど、えんえんとそれがつづけられてるのはそれより有効な手法というのがみあたらないからだろう。洗脳といういいかたはちょっとあれですが、まあ、そうおもいます。しかし、今回の研修に参加してたのは四十代とか五十代とかのそこそこの役についたオヤジばっかりで、いまさらこんなことさせなくてもこのひとらは会社のためならなんだってやるのになあとかわいそうになりました。そんで、みんなをかわいそうがりつつ、ついでにじぶんのこともかわいそうがりつつ訓練をうけてて、こまったのは、小グループにわかれてそれぞれのグループにいわゆる鬼教官みたいなひとがついて指導をされるんだけど、おれたちの教官はおじいちゃんで、このじいちゃんがだんだん興奮してきて、二日めの午後になにかわめいたときに、ボタっと床になにかがおちた。なんだありゃ? とおもってみると、それはじいさんがくちからとばした入れ歯なのであった。興奮のあまりじいちゃんは、罵声をとばすついでに入れ歯までとばしてしまったのだ。それからじいちゃんはあわてて入れ歯をひろって、ホゴホゴというかんじでくちにいれたんだけど、わらうわけにはいかなくて、ものすごくくるしいおもいをした。ただでさえ腹筋がいたくなってるところに、さらに大ダメージをうけてしまった。おれのグループの研修生はみんなおなじおもいをあじわったらしくて、あとで帰るときにみんな「あの攻撃はあんまりだ」と不平をもらしていました。
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