| [2001年01月15日] セイレーン |
| 菓子パン(あさ) てんぷらそば。カレーライス(ひる) うなぎのにたの。めし(ゆう) |
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むかしむかし、夏で、たぶんおれはつかれはてていて、西武池袋線の最終電車にのっていた。シートのまんなかにひとりでこしかけて発車をまっていた。むかいがわのシートには、女の子がすわっていた。そのときのおれとおなじくらいのとしだった。ぴらぴらしたタンクトップをきて、スカートからひざをみせていた。ほかに乗客はなかった。いや、ほんとうはいたのかもしれない。彼女いがいのことはよくおぼえていない。電車がうごきだした。おれはすることもなくて彼女にみとれていた。きれいな女の子だった。めのまえにきれいな女の子がいたら、ひとまずだまってみとれるしかない。とうとつに、彼女がおれをみた。目と目があった。おれがびっくりしていると、彼女はおれにむかってほほえんだ。あるいはただ頬がひきつっただけなのかもしれない。でもおれにはほほえんだようにみえた。それは一瞬だったが、おれは世界中からほほえまれたような気もちがした。彼女は視線をはずして、またすまし顔にもどった。電車がひとつめの駅についた。彼女はたちあがり、電車をおりた。おれはそこですこし思案した。一秒か二秒か、それくらいだけど、思案した。ばかげている、とおもった。おれのおりるべき駅はふたつも先だった。それは最終電車だった。こんなところで、はじめてみる女の子のために電車をおりるなんてばかげている。でも彼女は、ほほえんでくれた。おれにむかってほほえんでくれた。ああ、だけどそんなことのために電車をおりるやつなんていない。思案するうちにホームでベルがなった。あたまのなかのことは関係なくからだがひとりでに反応して、おれは電車をおりた。ホームにたって彼女のさった方角をみた。うしろすがたがみえた。とびらがしまり、電車が発車した。その風をかんじながら、おれは彼女にこえをかけるために、彼女のほうにむかってあるきはじめた。それからさきどうなるなんてかんがえていない。とにかくあるきはじめた。 |
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