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→質問です。英語のことわざに「よい生活が最高の○○である」というのがあって、この○○にはいるのはなんだとおもいますか。そうたずねられたとして、もしことわざをしらなかったら、この○○をおもいつくひとはまずいないとおもう。漢字二文字です。なんだとおもいますか。
→正解は「復讐」です。よい生活が最高の復讐である。おもいもよらないよね。「よい生活が最高の」ときて、なにやらさわやかな気もちにさせといて、そこで「復讐」はなかなかもってこれない。ちょっと意表をついていて、印象的なことわざだとおもう。だけど、ところで、いったいこれはなんのことだ? だれになんの復讐をするのかしらないけど、なぜよい生活が復讐になるんだ? さっぱり意味がわからない。でもなんとなく記憶してしまうことわざで、どこかで復讐ということばをみみにするととっさにこれをおもいだす。おもいだすたび、そういえばこれってなんのことだろうとくびをひねる。たとえば身のまわりに、聖人君子とでもいうような立派な生活をおくっているひとがいて、どうしてそんなにまじめなんですかとそのひとにたずねたときに、「これは復讐なんです」とこたえられたら、それでなっとくがいきますか? いかないよね。だれに、なんの復讐をしてるんだ。それのどこが復讐なんだ、とくびをひねるしかないよね。
→「それはだな」いつまでもくびをひねっていると、しびれをきらしたもうひとりのおれが説明をはじめる。「復讐なんてうしろむきなことは忘れて、まえむきにやっていけよ、そうやってすごすことが、結果的には復讐になるってことなんだよ」
→ふうん。そんなものなのかね。でもなあ、となっとくのいかないおれは反論をはじめる。おれが復讐といっておもいうかべるのは、たとえば東海道四谷怪談だけど、おいわさんがよい生活をおくったところで、いったいなんの復讐になる? おいわさんがうらみをいだいたままころされて、それでもあの世でまえむきに暮らしはじめたとして、それじゃいったいだれが伊右衛門をこらしめるんだ? そんなの、ぜんぜんすっきりしないじゃないか。すっきりできなくて、それのどこが復讐なんだ。だいたいそもそもそんなはなしをだれが聞きたがる?
→ところが、こないだ上海(というゲームがある)をパソコンでやっていたら、それはパズルみたいなゲームで、あがると画面にことわざのような一行がでてくるんだけど、こないだやっていたら、こんな一行がでてきた。
The best revenge is not living well.The best revenge is revenge.
→おもわずちょっとうけた。それから、これならおおいに納得がいくとおもった。やっぱり復讐は復讐だよね。英語版で四谷怪談のリメイクをしたら、ぜひおいわさんにクライマックスのところでいってほしいようなせりふだ。そうこなくっちゃとおもうよね。おいわさんは戸板の裏から両手をだらーっとさせたあのポーズであらわれてこそおいわさんだよ。やっぱり。
→ところでフトおもったんだけど、もしおれにどこかでかつて、ひどいうらみをいだかせたままころしてしまった女の子がいたとして、その女の子の幽霊が「うらめしやあ」と部屋にでてきたらどうしよう。なんて説得したらいいんだ? そういうときこそこのことわざをもちいるといいのかもしれない。
「まっ、まて、話せばわかる、ほらいうだろう、よい生活が最高の復讐だって、だから、落ち着け、落ち着いてくれ、おねがいだから」
→どれほど効果があるかはわからないけど、なんにもいわないよりはましだろう。もしそのときがきたら、ためしにいってみることにします。さいわいなことに、いままでそういう幽霊がでてきたことはないけど。もちろん、そんなひどいめにあわせてしまった女の子もいないし。ほんとほんと。たぶん。
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