とり  マルコポーロ

 階段をのぼっていたら女の子の三人組がまえにいて、おしゃべりをしながらのぼっている。マルコポーロの話をしている。どうも、マルコポーロをしらない子がいて、その子にあとのふたりが説明をしているみたいである。「だからあ、ほら、まあるくて、ちっちゃくて、サクサクってしてるの」「そうそう、よくたべたよねえ、きいろくてさ、なんであれをしらないの?」「ふつうしってるよね、マルコポーロ」「しってるよねえ、マルコポーロ」というかんじで、マルコポーロをしらない子をせめたててる。しらない子もはじめは「なにそれ」というかんじだったんだけど、そのうち「あ、あれかあ、ああ、しってるしってる」というふうにうなずきだした。話をききながらおれは、階段からころげおちそうになってしまった。‥という話をしりあいの女の子にしたら、ふんふんと彼女はおとなしくきいていたかとおもいきや、おしまいに「タマゴボーロだよね、三人もいてひとりもまちがいに気づいてないなんてひどいよね」というおれの総論のところで「え?」という表情になった。「ああ、そうか、タマゴボーロか、あたしもぜんぜん気がつかなかった。マルコポーロっていわれて、タマゴボーロをおもいうかべちゃってたよ」という。これにはおれもあぜんとしてしまい、おもわずあとじさりをはじめるとこんどはきゃっきゃとよろこびだして「やだなあくりたさん、冗談ですよう、タマゴボーロとマルコポーロをいっしょにするわけないじゃないですかあ」という。なんだかわけがわからない。たぶん彼女はぼけたのだ。おれがつっこむのをまってたのだ。なんだかわけがわからない。どうもおれは根が正直なせいか、わけのわからないところでぼけられるとうまく対処できない。女の子ってときどきそういうぼけかたをする。みわけがつかないことがある。あるいはただたんにおれがとろいだけなのかもしれない。そういう気もする。もしかしたらあの三人組も女の子たちにしても、たんにぼけていただけなのであって、階段のうしろからおれがつっこんでくれるのをいまかいまかとまっていたのかもしれない。だとしたら、すごくもうしわけないことをしたとおもう。

[09,03,2000]